うさぎの病気、症状、正しい飼い方

うさぎはめったに鳴きませんし、鳴いたとしても声が小さくおとなしい小動物なので、マンションなどでも飼いやすくとても人気のあるペットです。おとなしいからこそ、飼い主様が気をつけてあげないと病気の兆候を見逃すことになります。特に、げっ歯類の動物は他のペットと違って、歯が伸びつづけるので、ケアを怠ると病気になることがあります。

このような症状が見られたら要注意

不正咬合

うさぎが食事のときに物をうまく噛み切れないようになっているようでしたら、不正咬合かもしれません。そのまま歯が伸びていくと、口の中を傷つけたり、よだれを垂らしたりするようになります。さらに悪化すると舌や頬に穴が開いてしまうこともあります。

治療は歯科処置となりますが、歯が伸び続けるので数週間から月1回のペースでご来院いただいて治療していくことになります。特に食欲がなくなると他の病気を引き起こすことにもなるので、早期の治療が大切です。

不正咬合は食事の問題やアゴや歯の怪我によるものが多く、これらを予防することが大切です。驚いてケージで顔を打ったり、ケージをかじって歯を折ったりすることがないように内張りのケージにするなど工夫が必要です。食事については、しっかり噛んで食べるように牧草を十分に与えてください。

子宮疾患

飼育環境がよくなってきており、うさぎの寿命が長くなっています。それに伴って、高齢のうさぎの子宮疾患も多くなってきています。具体的な症状としては、血尿として現れることが多いようです。ただ、うさぎの尿は正常であっても、赤や褐色になることがあり、素人では判別がつきづらいので、動物病院で尿検査をするのがいいでしょう。子宮水腫などでは、血尿ではなくお腹が大きく張ってくるようになります。

治療としては、抗生物質や止血剤などの内科療法はあまり有効性が認められていません。できるだけ早期に子宮卵巣摘出手術を行うことが有効です。全身麻酔が必要になるのでうさぎの年齢や体力も考慮しながら治療を行うことになります。

避妊手術をすることで子宮疾患の予防になることが知られています。高齢になってからの手術はリスクも高くなり、子宮疾患は3、4歳以上で妊娠経験のない場合に起きやすいことから、繁殖を考えないのであれば、若いときに避妊手術しておくことがよいでしょう。

乳腺疾患

乳腺から膿や体液が出ている、しこりなどがある場合は、乳腺疾患の可能性があります。子宮疾患と関連することも多いので、異常が見られたら動物病院で診療してもらいましょう。 単に乳汁がたまっているだけであれば、押し出すだけで治ることもありますが、細菌が侵入し炎症を起こしている場合は治療が必要になります。また、腫瘍化が疑われるときは組織を切除して検査をします。

治療しても、再発する可能性もあるので、避妊手術で再発防止をすることも必要です。
また、乳腺の変化はなかなか分からないので、普段から観察しておくことが重要です。

毛球症

うさぎは自分の身体をなめてグルーミングをします。このとき、抜けた毛を呑み込んでしまい、丸まって消化器官につまってしまうのが毛球症です。

症状としては、「食欲不振や排便量が少なくなる」、「あまり動かなくなり、元気がなくなる」などがあります。ひどくなると、ショック症状を起こすこともあるので注意が必要です。

治療は消化器系の機能を回復させることが主になりますが、食欲が落ちている原因はさまざまなので、場合によっては強制的に食べさせる必要があります。注射器などで流動食を与えることになりますが、口の周りが汚れるので清潔に保ってあげましょう。また、軽い運動やマッサージなども有効です。

食欲が落ちる原因としては環境の変化によるストレスによるものも大きいので、うさぎが落ち着ける環境を用意することを心がけてください。

寄生虫

うさぎの寄生虫は、消化器官など身体の内部に入るものや、皮膚につくダニのような寄生虫もあります。そのままにしておくと、他の疾患を引き起こすことになるので、薬などを使って駆除することが必要です。

消化器官の寄生虫の場合は下痢を引き起こすことが多くなり、皮膚の寄生虫は痒みを伴うので、必要以上に引っ掻いて毛が抜けて傷だらけになってしまいます。予防は清潔にすることが一番です。できれば3~4日に一度、最低でも週1回はケージの掃除を行い、清潔に保ってあげましょう。

飼い方

うさぎは、基本的にケージの中で飼うことになります。ケージをどこに置くのか、ケージの外にも出すのかどうかを決めることがポイントです。

室内

どこにケージを置くのかが重要なのですが、物音や夜間の明かり、人の出入りなども考えて、うさぎが落ち着ける場所を探しましょう。臆病なペットなので、物陰に隠れるようにする、夜間は厚手の布を被せるといったことも必要です。

室内を自由に動き回れるようにする場合は、フローリングではうさぎの足に負担がかかることもあるので注意してください。また、電気ケーブルを噛むこともあり、小さなゴミを誤飲することもあるので、室内に出す場合には細心の注意を払っておきましょう。

室外

室外のケージでは、多頭飼育になることが多いのですが、うさぎが争うことでの骨折や傷を負うことがあります。個体ごとの健康管理がやりにくくなるので、気が付くと非常に弱っているうさぎがいるといったことにもなるので、常に目を配るようにします。

庭で放し飼いにするのは、うさぎにとって理想的な環境ですが、カラスや猫などに襲われる可能性が高くなります。また、食事が豊富にありすぎることで胃腸疾患になることもあるので、食事の与え方は注意が必要です。

食事について

うさぎは草食動物であり、食物繊維の多いものをしっかり噛んで食べないと歯が伸びて病気になりますので、意識して牧草を多く食べさせてあげることが基本です。ペレットは、体重の1.5%に相当する量を与え、それと同等以上の牧草を目安に与えてください。

菜っ葉類や根菜類の野菜も食べますが、アゴや歯に負担がかかるので薄くスライスしましょう。ただし、牧草の代わりにはならないので量を制限するように。間違っても、味付けされたドライフルーツや炭水化物(パン、クッキーなど)は腸内環境を乱すので与えてはいけません。

うさぎ専門のペレットも用意されていますので、食物繊維の多いもの、低カロリーで肥満を抑えるように考えられたもの、カルシウムを制限して尿結石にならないものを選ぶようにしてください。

PICK UP ウサギの避妊・去勢手術について

PICK UPウサギの避妊・去勢手術について

ウサギは基本的におとなしいため、とても人気のあるペットですが、繁殖力がとても強い動物であることはご存知でしょうか。当院ではウサギの避妊・去勢手術も行っています。ここではウサギの避妊・去勢についてご紹介します。

  • ウサギは繁殖力がとても強く、早ければ生後4カ月で妊娠する
  • メスは年に5~6回妊娠し、1回に5~8頭出産する
  • 避妊をしていないメスの生殖器疾患は非常に多く、不安定な精神状態が続き、問題行動を引き起こす
  • オスはマーキングで縄張りを主張したり、飼い主様に攻撃的になることがある
  • オスの同居ではケンカが絶えない

避妊・去勢手術をすると…

  • 不要な出産を防ぐことができる
  • 攻撃性がなくなり、とても飼いやすくなる
  • 病気の予防になる

手術の準備は…

  • 通常、メスは6カ月令以上、オスは5カ月令以上で手術ができる
  • 全身麻酔をかけて、左右の卵巣や子宮・精巣を摘出する
  • 1才までに手術をすませるのが好ましい

手術後は…

  • エネルギーの要求量が減るので、手術前より2割ほど食事を減らし、肥満に気をつける
  • 去勢してもしばらくは副生殖腺に残った精子で妊娠させることができるので、手術後5週間はメスと一緒にしない

将来的な繁殖を考えていない場合は、早めに避妊手術をすることをおすすめします。「かわいそう……」と思われる飼い主様もいらっしゃるかもしれませんが、病気の予防や、発情期のストレスがなくなったりと、メリットもたくさんあります。ペットの一生にかかわることでもあるので、避妊・去勢をご検討されている飼い主様はお気軽にご相談ください。